2021年|日本|75分|カラー|シネスコ|5.1ch 配給:マクザム
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
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東京 | ヒューマントラストシネマ渋谷 | 03-5468-5551 | 2022/1/7(金)~ |
愛知 | 名古屋シネマスコーレ | 052-452-6036 | 2022/1/22(土)~ |
大阪 | シネ・リーブル梅田 | 06-6440-5930 | 2022/1/14(金)~ |
大分 | 別府ブルーバード劇場 | 0977-21-1192 | 2022/1/14(金)~ |
神奈川 | シネマノヴェチェント | 045-548-8712 | 2022/3/5(土)~ |
広島 | 横川シネマ | 082-231-1001 | 2022/4/16(土)〜 4/21(木)19:30 |
東京 | Morc阿佐ヶ谷 | 03-5327-3725 | 2022/5/9(月)〜 5/17(火)20:25 |
血を…狂おしき快感を…。
美しき獲物を求め、東京の街をさまよう狂気のタクシー・ドライバーが引き起こす、悪夢のような惨劇!
『KARATE KILL/カラテ・キル』『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』で、世界のジャンル・ムービーファンから注目されている光武蔵人の最新作はジャーロ――マリオ・バーヴァ、ダリオ・アルジェント、ルチオ・フルチといった監督たちの諸作で知られる、独自の様式美に彩られた血と暴力とエロスの物語である。60~70年代に人気を誇ったジャーロは、近年ヨーロッパを中心に復活の兆しを見せている。光武はこうした映画界のトレンドに反応し、過去の名作へのオマージュを捧げつつ、LA在住の日本人映画監督というユニークな視点を活かしたメッセージと美意識を盛り込み、“ジャパニーズ・ネオ・ジャーロ”なる、新たな恐怖を提示して見せた。
狂気のタクシードライバー・フジナガを演じるのは、木村知貴。数多くの映画・TVドラマへの出演で知られ、「映画監督に愛される男」と異名を取る名バイプレイヤーだ。本作では、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017でグランプリを受賞した『トータスの旅』以来となる主演を務めた。また、ジャーロの“花”ともいえる、美しき獲物――“マニアック・ドライバー”の標的となる女性役には、古川いおり、佐山愛、卯水咲流、きみと歩実といったセクシー女優たちが顔をそろえている。また、木村と同様に日本映画に欠かせない名優・川瀬陽太も参加。物語の終盤のキーパーソンとして登場し、鮮烈な印象を残す。
「この女、俺と、死んでもらう」。黒のプレジデント・ソブリン、車体と同じ色のドライビング・グローブを嵌めたフジナガは、降車して去っていく女性客の後ろ姿を、じっと見つめていた。忌まわしい出来事によって絶望の淵に落とされ狂気にとりつかれた、このタクシー・ドライバーの唯一の望みは、最高の生贄と呼ぶにふさわしい女を殺し、自分もこの世界から消えてしまうことだった。そんなある夜、フジナガはとうとう“生贄”を発見する。密かに彼女をつけ回し、住所を突き止めたフジナガ。狂気の計画はついに実行の時を迎える――かに思われたが…。
ジャーロはイタリア流スリラーで、その意味は黄色――なんて概念を脱ぎ捨て、十人十色に進化するネオ・ジャーロ。光武監督渾身の和製ジャーロが暴き出すのは、奇妙な悪徳と狂った秘めごと。殺しを呼ぶタクシーが暗闇の淫獣を切り裂き、柔肌の狩人が映画史の赤い深淵をさまよう。震える甘い肉体は、黒衣の殺人者のために。
――山崎圭司(映画ライター)
暴力とエロスの極北を突き進む光武蔵人監督が、またまた公序良俗とは一切無縁のアブない作品を撮ってしまった。こんな主人公を描いたら、もう後は無いぞ、と言いたくなるようなワケありの猟奇殺人犯。タクシードライバーという、さりげない仮面を被っているのが何ともスリリング。むろん、若くて美しい生け贄を物色するために選んだ仕事である。映画はそのドライバーの日常を、本人の虚無的なモノローグを入れながら描いていくのだが、冒頭から恐怖と苦痛混じりのエロスが全開、私など、そこで観るのを止めようかと思ったほど。が光武作品、鬼が出るか、蛇が出るか、一度、観はじめたら好奇心を刺激され、止められるワケがない。フルフェイスに黒いコスチュームで、全裸の生け贄の女性をいたぶるドライバー。その理由はモノローグで語られるが、この作品ではモノローグにも裏があり、その狂気と妄想の底なし沼に、こちらまでズッブズブ!確かにこのドライバーはとんでもない猟奇殺人犯だが、光武監督は、現代社会が産み出した怪物として、肯定はしないまでも、断罪も、しない。そういう意味でも『マニアック・ドライバー』は観る人全員、共犯者。彼は今日も美しい生け贄を探して街を流している。ご乗車、ありがとうございます、と呟きながら。
――北川れい子(映画評論家)
常人には理解できない異常心理に取り込まれてしまったようなライド感があり、観客をも、罪の意識の共犯にするようだ。
既成のさまざまな映画の展開がチラリと頭によぎることがあっても、さらにひとひねりあるのが、意表をつかれるとともに、心理劇の内閉感が一挙に転開する瞬間でもあって、「これは娯楽作品なんだ」という思いも募る。結果として「イカした映画」感に着地するあたり「一本取られました!」と言いたくなった。
――切通理作(批評家)