イントロダクション

長くアメリカの映像業界で研鑽を積み、『モンスターズ』で長編監督デビューを飾った俊英・光武蔵人の第二弾長編となる本作は、ロサンゼルスで撮影された“逆輸入チャンバラ映画”。DVDリリースの直前となる8月21日から渋谷アップリンクXでの上映も決定し、光武監督念願の日本凱旋公開が晴れて実現する。

本作は2009年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭にも出品され反響を呼んだが、アメリカやヨーロッパの各映画祭では、それを上回る評価と賞賛を得ることとなった。09年ファンタスティック・プラネット映画祭での最優秀作品賞・特殊メイク効果賞受賞の2冠を達成し、今年に入ってもフランスのモーヴェジャンル映画祭 観客賞に輝くなど、錚々たる結果を残した。さらに、『呪怨 パンデミック』の現場でアシスタントを務めた光武のもとに清水崇監督から推薦コメントが寄せられ、ジミー・ウォング主演作『スカイ・ハイ』や『スローター・ゲーム』といったカルト映画を手がけたことで近年再評価されているブライアン・トレンチャード=スミス監督や、コラムニストとしても知られる映画評論家・町山智浩氏らが絶賛。ドイツ、オーストラリアでのDVDリリースに加え、北米、ロシアでの配給も予定されるなど、世界のインディーズ映画シーンをリードする作品となった。

主演は、監督も務めた光武蔵人自身。人気ドラマ『アグリー・ベティ』や『HEROES/ヒーローズ』への出演でも光った、役者としてのスキルの高さを見せつけた。アメリカン・クロニクル紙で舞台での演技を評価された伝田真理子や、大作『パール・ハーバー』への出演も果たした鎌田規昭を筆頭に、ハリウッドで活動する日本人キャストの活躍も目立つが、特別出演としてクレジットされているアマンダ・プラマーの名前も見逃せない。

低予算ながらもそれを感じさせない、アイディアに満ちた映像づくりを成し遂げた敏腕スタッフの中でも、特筆すべきは特殊メイクだろう。これを担当したマイケル・デル・ロッサは『300〈スリー・ハンドレッド〉』『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』ほか、ハリウッドの名だたる大作に参加した経歴の持ち主。撮影の中原圭子は、06年サンディエゴ・ラティーノ映画祭 最優秀短編映画賞受賞というキャリアを誇り、その後に手がけたいくつかの作品が日本でDVD発売されてもいる。

92分の本編中には、光武蔵人が心酔する全ての映画のエッセンスが凝縮されている。勝新太郎主演の『座頭市』シリーズや、若山富三郎主演の『子連れ狼』シリーズに代表される、70年代の邦画を彩った残酷チャンバラ映画。セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』などがブームを牽引したマカロニウエスタンの諸作。過剰なまでの血しぶきと人体破壊描写には、黒澤映画や80年代に隆盛を極めたスプラッタ映画への憧憬が感じられる。これらオマージュとリスペクトが捧げられた多くの映画たちと、突如挿入されるアニメーション、冒頭に記された“おことわり”や“光武プロダクション”ロゴに垣間見える遊び心が渾然一体となった刺激的なゴッタ煮世界は、無数の、そして底無しにマニアックな楽しみに溢れている。クエンティン・タランティーノ作品にも通じるその味わいに熱狂する、多くのファンが生まれることは間違いなし!日本人監督・光武蔵人が創造した、男泣きエクストリーム・バイオレンス・アクションの世界を堪能せよ!!